BtoBビジネスにおける顧客接点は、デジタルマーケティングが依然として主流です。一方で、デジタル広告のCPAは高騰を続け、営業メールも容易にオプトアウトされるなど、デジタルならではの課題も顕在化。つまり今、“別解”が求められています。こうした課題感を背景に、法人向けギフティングプラットフォーム「SendWOW」を提供するSmapoは2026年3月11日(水)、オフラインイベント「ビジネスギフトデイ2026 〜デジタル施策の飽和を突破する、BtoBにおける顧客体験の設計〜」を開催。「オフライン広告」および「DM施策」の最前線で活躍する2社に登壇いただき、実践的な取り組みについて語っていただきました。本レポートでは、イベントで語られた内容の一部始終をお届けします。デジタル広告は今、“押し付け”になっていないか?東京・五反田にあるギフティのイベントスペースで開催された本イベント。18時30分の開場とともに参加者が続々と集まり、温かい拍手に包まれながら、イベントは幕を開けました。冒頭、モデレーターを務めたSmapo代表取締役の蔭山明里さんが、本イベント開催の背景を語りました。「私は、もともとインターネット広告に携わっていましたが、その中で、広告が一方的に“押し付ける”コミュニケーションになりがちな点に違和感を抱いていました。そうした思いから、現在はSmapoで、“リアルなコミュニケーションの接点づくり”をテーマに、SendWOW(※)というサービスを提供しています。さらに、このようなイベントの開催を通じて、同じくBtoBマーケティングに課題を感じている方々の一助となれば幸いです」(蔭山さん)※SFAツールと連携し、数クリックで簡単に手紙やギフトなどのオフラインの送付物を1通ずつパーソナライズして贈ることができるサービス続いて登壇したのは、オフライン施策を軸にマーケティング支援を行うohpner(オープナー)代表取締役の土井健さんです。土井さんは、広告配信プラットフォームfluctの立ち上げに参画し、日本最大級の事業に育て上げ、2016年に代表取締役に就任。その後、運用型テレビCMを展開する株式会社テレシーの初代CEOに就任し、3期目で売上78億まで成長させました。そこで初めてオフライン広告の領域に携わるなかでその可能性に着目。その後ohpnerを創業し、モビリティ広告(旧:アドトラック)の開発など、オフライン広告のさらなる活用を推進しています。デジタルの「頭打ち」をどう超えるか——ohpnerが語るオフライン広告の可能性まず土井さんは「インターネット広告は行き過ぎたのではないか」と指摘します。ユーザーを過度にターゲティングしすぎた結果、獲得できる顕在顧客を刈り尽くし、次なる打ち手を見出せていないのではないか、ということです。これを端的に表現すると「同じフィールドで同じ顧客にばかりアプローチしている」と土井さん。「つまり、デジタル広告がすでに頭打ちの状態にあるにもかかわらず、さらに投資を続けてしまっている。しかし、持続的な成長を目指すのであれば、既存チャネルの延長線上にない打ち手を探す必要があります。オフライン広告は、まさにその“違うフィールド”を見つけるための手段の一つだと思います」(土井さん)その例として、フリマサービス市場において後発ながら先行企業を追い越しシェアを拡大した会社や、セキュリティ領域・名刺管理領域といったレッドオーシャンにおいて圧倒的な認知を築いた会社の名前を挙げ「両社ともテレビCMを効果的に活用した結果、今や業界で不動の地位を築いています」と語ります。さらに、オフライン広告の価値を相対的に高める要因として、近年急速に進化する「AI」の存在を挙げます。AIの進化により、個人の趣味嗜好に最適化された情報がレコメンドされ、その精度は今後さらに高まっていくと考えられます。しかし、そうした状況について土井さんは「味気ない」と指摘します。「本屋に行って、もともと興味がなかった本でも『今こういうトレンドが来ているのか』と気づくことがある。こうしたセレンディピティ(偶然の出会い)はAI時代においてより価値が高まるでしょうし、それを創出する“装置”として、オフライン広告は機能します。そうした意味でも、オフライン広告の価値は今後さらに高まっていくと感じます」(土井さん)では、こうしたAI時代に一層期待が高まるオフライン広告を、どのように活用すれば確かな成果につなげることができるのでしょうか。オフライン広告の効果を引き出す鍵は「複合接触」土井さんは、オフライン広告を効果的に活用するためには「複合接触」の観点が重要だと説きます。複合接触とは、ターゲットの生活動線上に複数のタッチポイントを作り、繰り返し訴求をすることです。具体例として、土井さんは次のように説明します。「たとえば、丸の内エリアで働くビジネスパーソンにアプローチする場合、まずオフィスビルが多い特性を踏まえ、エレベーター広告に出稿します。さらに、同一エリアを走るトラック広告を掛け合わせることで、オフィスの外でも同じ広告に接触する機会を創出します。加えて、その人がオフィスに戻った際には、SendWOWによってオフィス宛に届いた自分宛の手紙に触れることで、さらに認知を重ねていくことが可能なわけです」(土井さん)こうした複合接点は、単一メディアでの接点創出と比べて、購買行動を促しやすいといいます。一方で、このような接点設計をテレビCMだけで実現しようとすると、億単位の投資が必要になります。しかし、複数の施策を特定のエリアに絞って展開することで、数千万円規模でも同等の訴求効果を実現できるといいます。限られた予算内でターゲットに確実にリーチし、行動にも移してもらうためには、こうした設計の工夫が重要だと話し、土井さんはセッションを締めくくりました。休眠顧客を動かす——LayerXが実践する、DM×データによるナーチャリング設計続いて、LayerX バクラク事業部 グロースマーケティング部の池田小百合さんが登壇しました。池田さんはLayerX入社当初、カスタマーサクセス部に所属し、約2年前にマーケティング部門に異動しました。現在は、バックオフィス向けAIエージェントサービス「バクラク(※)」のマーケティング、特にナーチャリングに注力しており、メールやDM、セミナー、ホワイトペーパーのようなコンテンツ制作などを柔軟に組み合わせた施策を展開しているとのことです。さらに、LayerXでは、SendWOWを実際に導入しており、休眠顧客の掘り起こしにも成果を上げているとのこと。本セッションでは、その具体的な取り組みについて解説いただきました。まず、SendWOWをどのように活用しているのか。活用におけるポイントを伺うと、オフライン施策ならではの“精緻さ”が重要であることが見えてきました。というのも、オフライン施策はオンライン以上に、顧客と自社の過去の関係性を踏まえたパーソナライズが求められるためです。顧客の接点履歴や商談状況、属性情報はSalesforce上で管理されていますが、DM施策ではそれに加え「同じ取引先の別のリードにいつどのようなDMを送ったか」など、Salesforceのレポートなどでは抽出が難しい情報も考慮する必要があります。こうした点を踏まえずに実行すると、かえって顧客体験の毀損につながる可能性があるからです。「さらに、営業やインサイドセールスのメンバーから『(今、このお客様とは〇〇という状況なので)送らないでほしい』といった現場の意見など、データだけでは拾いきれない条件も、運用を進める中で数多く見つかりました。それらを、都度数百件以上のDMを送る中で目視で確認していくのは限界がありました」(池田さん)そこで、顧客とのより詳細な接点情報を統合・加工。送付対象リストを別途作成した上で、Salesforceの画面上から直接SendWOWでDMを送付しているといいます。また、送付状にはデジタルギフトなどが受け取れるインセンティブ付きの二次元コードを記載。その読み取りをトリガーにSlackで担当者へ通知が届く機能もSendWOWに標準搭載されています。これにより、DMを受け取った顧客が手紙を読んでいるタイミングに合わせたフォローコールが可能になります。このように、DMという特別感のあるパーソナライズ施策の成果を取りこぼすことなく商談化につなげられる点も大きなメリットだと、池田さんは語ります。打ち手がなかったサンセット層に突破口、DMで商談機会を創出特に効果が見られたのが「サンセット層」と呼ばれる休眠顧客へのアプローチだといいます。これは、一定期間メールを開封していなかったユーザーを指し、LayerXではサンセット層の方々を通常のメルマガ配信のリストから切り離して管理していました。しかし、こうしたサンセット層に対しても、より特別なアプローチで掘り起こしを図れないかと検討した結果、着目したのが前述のDM施策でした。「掘り起こしのためにも、業界や職種、従業員規模などで細かくセグメント化し、その業界に特化した事例やメッセージを盛り込むことで、よりパーソナライズされた施策となるよう工夫を施しました」(池田さん)その結果、サンセット層だった顧客と改めて商談する機会を得られたとのこと。そして池田さんも、デジタルでは掘り起こしが難しかった休眠顧客とも新たに接点を持てたことから、オフライン施策の価値をより強く実感しているといいます。これを受けて、蔭山さんは次のように語ります。「先ほど土井さんがお話しされていた“フィールド”のようなものかもしれません。メールやWeb広告で接点を持てない場合でも、DMのようなオフライン施策を試してみることで、潜在顧客のニーズを顕在化させたり、休眠顧客との新たな接点を創出できる可能性があるわけですね」(蔭山さん)なお、LayerXでは現在、DM施策をマーケティング施策の一つとして確立しており、KPIも設定するなど継続的に運用されてるそうです。今後もSmapoとの連携を深め、より有機的な活用を検討していきたいと語り、池田さんはセッションを締めくくりました。セッション後も続く熱気——明日から使えるヒントが満載の「ビジネスギフトデイ」、盛況のうちに閉幕セッション終了後、会場では交流会が始まりました。登壇者3名のもとには参加者が集まり、名刺交換や具体的な相談が次々と交わされていました。「自社でもDM施策やギフト施策を試してみたい」「複合接触の設計について相談したい」といった声も多く聞かれ、セッションで得た知見をすぐに自社に活かそうとする熱量が伝わってきました。会場を見渡しながら、蔭山さんはこう語りました。「今日語っていただいた内容は、明日から使えるヒントばかりだと思います。こうして参加者の皆さんがつながり、試した結果をまた持ち寄れる場を、Smapoとして作り続けていきたいと思っています」(蔭山さん)デジタルが当たり前になった今だからこそ、リアルな接点の価値はより際立つーービジネスギフトデイ2026は、その可能性を参加者一人ひとりが実感する一夜となりました。